藤沢の法律事務所の相続コラム27

2020/05/28
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藤沢かわせみ法律事務所です。

 

今回は自筆証書遺言に記載された日付に関して、該当遺言の効力が無効と判断されたケースをご紹介致します。

 

①年月の記載はあるものの、日の記載がない自筆証書遺言

 

「民法968条1項にいう日付の記載を欠く」として、当該自筆証書遺言の効力が無効と判断されました(最高裁昭和52年11月29日判決)。

 

②「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された自筆証書遺言

 

暦上の特定の日を表示するものとはいえないとして、当該自筆証書遺言の効力が無効と判断されました(最高裁昭和54年5月31日判決)。いわゆる吉日遺言と言われています。

 

③故意に作成日付を遡らせた自筆証書遺言

 

「民法968条1項の自筆証書遺言の方式を欠き無効である」とされました(東京最高裁平成5年3月23日判決)。ただし、①と②の判例とは異なり、遺言上に日付の記載はなされています。そのため、単なる誤記なのか、故意に作成日付に不実の記載を行ったのか、という点に関して見極めることが必要ですし、裁判になってしまった場合には、主張を裏付けるための証拠を収集することが大切です。

 

①と②の判例のように、日の記載がないものや「吉日」と記載されているものに関しては判断がし易いかと思います。ただ、③の裁判例のように、単なる誤記なのかそうでないのか、という点が争いになる場合には、遺言の有効性を慎重に検討する必要があります。前回ご紹介した、日付の誤記に関しては、遺言が有効と判断されています。

 

遺言の作成前であれば、方式に則った作成をさせて頂きたいと思いますし、そのための適切なアドバイスを心がけています。一方、相続発生後であれば、過去の事例を踏まえつつ、遺言の有効性に関するアドバイスをさせて頂きます。

 

自筆証書遺言においては、遺言者が遺言の全文、日付及び氏名を自書した上、押印することが必要です(民法968条1項)。

 

この「押印」に関して、「遺言者が印章に代えて拇印その他の指頭に墨、朱肉などをつけて押捺することをもって足りるものと解するのが相当である。」(最高裁平成元年2月16日判決)とされています。自筆証書遺言の押印は、指印でも足りるということです。

 

ただし、指印については、押印した者の死亡後は、本当にその指印が遺言者のものなのかどうか確認することが困難です。そのため、「指印でも構わない。」ということではなく、後日の紛争防止のために、実印や銀行届印を使用した方が安全ではなかろうかと思います。