藤沢の法律事務所の相続コラム49

2020/06/16
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藤沢かわせみ法律事務所です。

今回は、相続財産の一部を仏壇及び墓石の購入費用に充てた行為が、法定単純承認である相続財産の「処分」(民法921条1号)に該当するかどうかについてご説明させていただきます。

 

参考となる裁判例として、大阪高等裁判所平成14年7月3日決定があります。この裁判例は、葬儀費用と相続放棄との関連で参照されることもありますが、今回は、仏壇と墓石の購入に関する部分について、ご紹介致します。

同裁判例は、「葬儀の後に仏壇や墓石を購入することは、葬儀費用の支払いとはやや趣を異にする面があるが、一家の心中である夫ないし父親が死亡した場合に、その家に仏壇がなければこれを購入して死者をまつり、墓地があっても墓石がない場合にこれを建立して死者を弔うことも我が国の通常の慣例であり、預貯金などの被相続人の財産が残された場合で、相続債務があることがわからない場合に、遺族がこれを利用することも自然な行動である。そして、抗告人らが香典及び本件貯金からこれらの購入費用を支出したが不足したため、一部は自己負担したものである。これらの事実に、葬儀費用に関して先に述べたところと併せ考えると、抗告人らが本件貯金を解約し、その一部を仏壇及び墓石の購入費用の一部に充てた行為が、明白に法定単純承認たる「相続財産の処分」(民法921条1号)に当たるとは断定できないというべきである。」と判示しました。

 

この裁判例は、購入した仏壇及び墓石が社会的に見て高級なものではないこと等、種々の事情を考慮した上で、法定単純承認たる「相続財産の処分」に当たるとは断定できないと判断しています。また、この裁判例は、被相続人の債権者による請求権の行使が認められるか否かという裁判ではなく、そもそも、相続放棄の申述受理に関する裁判です。

「相続放棄の申述の受理は、家庭裁判所が後見的立場から行う公証的性質を有する準裁判行為であって、申述を受理したとしても、相続放棄が有効であることを確定するものではない。相続放棄等の効力は、後に訴訟において当事者の主張を尽くし証拠調べによって決せられるのが相当である。」とも判示しています。

そのため、相続放棄の効力に関しては、個別の事情によって判断せざる得ないのだと思います。