藤沢の法律事務所の相続コラム67

2020/07/09
ロゴ

藤沢かわせみ法律事務所です。

今回は、「遺留分と寄与分」について、ご説明をさせて頂きます。

 

具体的には、遺留分侵害額請求訴訟において、具体的遺留分の計算において寄与分を考慮すべきという主張が認められるかどうか、というものです。

 

[ 設例 ]

被相続人:A

相続人 :B、C(Aの子)

 

Aさんは、Bさんに唯一の財産である不動産を遺贈するという公正証書遺言を作成して死亡しました。相続発生後、Cさんは、Bさんに対して、遺留分侵害額請求訴訟を提起しました。Bさんは、訴訟において、「Cさんの遺留分を侵害しているとしても、Aさんの介護のために仕事を辞め、長年にわたりAさんの介護を行ってきた。具体的な遺留分の計算においては、自分の寄与分が考慮されるべき(端的には、減額されるべき)である。」という主張を行うことができるでしょうか。

 

[ 説明 ]

まず、前提として、Bさんの寄与は家庭裁判所の審判において認められる程度のものであるものとします。

その上で、Bさんの主張は遺留分侵害額請求訴訟において認められません。これは、寄与分が、共同相続人間の協議により、協議が調わないとき、または、協議をすることができないときは家庭裁判所の審判により定められるものであると考えられているからです。民法上も、民法1044条が民法908条の2を準用していません。そのため、遺留分減殺請求訴訟において寄与分の主張を行うことはできません。

 

ただ、この結論が、Aさんの真意に沿たものであるかどうかは疑問です。Aさんは、Bさんの長年の献身に感謝していたからこそ、Bさんに不動産を遺贈する遺言を作成したとも思えます。一方で、遺留分は、相続人のための最低保障という側面を有しています。そのため、Cさんにとっては、遺言の内容自体には納得することができなかったとしても、妥当な結論であるとも言えます。

 

当事務所においては、相続発生後に遺留分減殺請求の紛争が発生することが明らかであると思われる遺言書の作成をお手伝いさせて頂くことは少ないです。これは、遺言を作成しようと思う方に、「自分の相続発生後に相続人間で揉めて欲しくない。」というお気持ちがあるからだと思っています。ただ、遺言を作成しようと思う方のお気持ちに最大限、寄り添うことができるような遺言の作成のお手伝いをさせて頂いているという思いはあります。