藤沢の法律事務所の相続コラム82

2020/08/05
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藤沢かわせみ法律事務所です。

今回は、被相続人の生前に相続人が相続放棄を行うことが出来るか、についてご説明させて頂きます。

 

たとえば、自分の親の債務が多額であるため、親が生きているうちに相続放棄をしておきたい、であるとか、家族と疎遠であるし、十分に収入があるため、将来の相続トラブルに巻き込まれないために、生前のうちに相続放棄をしておきたい、というような場合です。

 

結論から申し上げますと、生前に相続放棄をすることは出来ません。民法915条には、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に」と規定されているとおり、相続放棄は相続開始後に行わなければなりません。そのため、冒頭の事例に関しては、いずれも相続開始後に、家庭裁判所に対して相続放棄申述受理の申立てを行う必要があります。

 

その他には、相続人が多額の生前贈与を受ける代わりに、被相続人に対して、「相続を放棄する。」旨の書面を差し入れることもあります。ただし、これは、相続放棄としての効力はありません。多額の生前贈与を受けていたのであれば、遺産相続の際に、別途、特別受益として考慮されることは有り得ます。

 

また、相続人が他の相続人に対して、相続放棄をして欲しいから、相続発生前に相続放棄の手続きをさせたいというご相談を受けることがありますが、これについても、認められるものではありません。一方、被相続人の立場からすれば、遺言を作成しておくことで、ご自身が希望する相続手続きを実現することが出来ます。相続人が誰かによって遺留分等を考慮しなければなりませんが、遺言を作成することによって、一定程度は、ご自身が希望する相続手続きを実現することが出来ます。

 

誰に何を相続させるか、そして、それをいかに確実なものにするかということについては、様々な方法がありますので、お一人で悩む前に弁護士にご相談頂ければと思います。